ケララの伝統舞踊カタカリを見て、表現力をアップする?!

ケララの伝統舞踊カタカリを見て、表現力をアップする?!

伝統舞踊というのは、どこの国のものでも奥深さを理解するにはある程度の勉強が必要で、いきなり長時間の鑑賞をすると結構退屈することも多いですが、楽しみ方のツボを押さえると意外に面白いものでもあります。

もちろん、最初からのめり込める方もあるでしょうが、ここでは初めて観る方が楽しめるポイントをお伝えします。

ちなみに、トップの画像はコーチン空港の中にある展示です。本物の役者のように良く出来ています。というより、本物が人間っぽくないんですけどね~

カタカリとは?

顔全体を鮮やかな緑色に塗りたくり、ド派手な衣装で演じられるカタカリは、17世紀から続く南インド・ケララ州の伝統舞踊です。今では観光のアトラクションとして気軽に見られるようになっていますが、本来はヒンズー教の儀式の際に、神々に捧げる踊りとして、何日にも渡って続けられる神聖なものです。習得には長い年月を要し、子供の頃から数十年の稽古を重ねて一人前の踊り手になります。

カタカリは、カタ=物語、カリ=舞踊という名前の通り舞踊劇で、ヒンズー教の叙事詩や神々にまつわるエピソードを演じます。セリフが一切ないのが特徴で、物語は顔の表情と動作だけで表されます。

踊手は、歌舞伎のように男性のみです(近年は伝統芸能を教える学校で、女子もカタカリを学ぶことができるようになっています)。ストーリーには女性も登場しますので、男性が女役をやります。

左が男役の衣装、右が女役の衣装です。

演技の前の解説をお見逃しなく!

何も知らずにただ見ても、ビジュアル的には楽しめるのですが、観光客向けの劇場に行くと、初めて観る人のための解説があります。これが結構おすすめ。基本知識を得てから劇を見ると、面白さが断然違います。

まずは目の動きから。上下、左右に動かしたあと、ぐるぐる回転させるのですが、ここですでに、常人には絶対にマネできない彼らの「技」を見せ付けられます。元々の顔立ちからしてデカ目の、中心にある黒眼が自在に動くサマは驚愕のレベル!! 目ヂカラあり過ぎです。あれだけ回して目が回らないのは、正に訓練のたまもの。

次に基本的な表情の説明。カタカリには、演技をする型としての、人間の基本的感情が9つあります。それは「愛、笑い、怒り、悲しみ、嫌悪、恐怖、勇敢、驚き、平安」。これらの感情は「ナバラサ」と呼ばれ、9つの感情を表現することは、カタカリだけでなく、インドの古典舞踊、古典音楽に共通するものです。

「9」というのは、伝統芸能に限らず、インドでは特別な数字です。もしかしたら、そこにあてはめるために感情を9つに分類したのかもしれません。日本語では簡潔に喜怒哀楽という4文字でくくられますね。それを9個に分けてしまうあたりに、現代のインド人の感情表現の豊かさのルーツがあるのかな、という気もします。

説明では、太鼓のリズムとともに、9つの感情を一つずつ、順番に演じて見せてくれます。このときの、顔の表情や手のしぐさ、身体の動きにご注目。後で劇を見るときに、あの表情だ!とわかれば、物語を読み解くのためのキーワードになります。手の形の一つ一つにも意味があります。ハワイのフラのようですね。

「ムドラ」と呼ばれる手の形の意味や、演目のストーリーなどを紹介したパンフが入場時にでチケットと一緒にもらえます。

それにしても、顔の筋肉って、鍛えればここまで動くのか!と、ここでもひたすら感心。自分の表情を豊かにしたい人、表現力をアップしたい人には大いに参考になるかも?!

劇の演目

カタカリの演目は何百もあると言われています。

もちろん基本はインドの古典ですが、最近は他国の文化を題材にしたものが演じられることもあり、悲劇からコメディーまで幅広く現代の観客に訴える工夫もされています。

さらに、時には観客を巻き込んでアドリブが繰り広げらることも。

↓↓舞台の中央のおじさんは、その場で引っ張り出された人です!

セリフが一切ないので、ある程度は観客の想像にまかされますが、パントマイムで何をしているかは、完璧にわかりました。

お客がとぼけて、なかなかに笑いを取った場面もありましたよ。

観客がすっかり引き込まれたところで、本格古典芸能を披露します。

なかなかによく考えられた構成でした。

おすすめの劇場

コーチン市内には、古典舞踊が見られる数多くの劇場があります。

そのうち、おすすめを3軒ご紹介します。

役者が舞台で派手なメークを施していく様子も人気です。メークは1時間前からスタートしますので、見たい方は早目に劇場に入りましょう。

①ケララ・カタカリ・センター

Kerala Kathakali Centre

フォートコーチンにある、最も古い劇場の一つ。

ロンリープラネットなどの英語のガイドブックに掲載されているため、欧米からの個人旅行者にも大人気。シーズンになるとかなり混雑しますので、早目の到着がおすすめです。

②グリーニクス・ヴィレッジ

Greenix Village

18:00~19:30

カタカリ1時間+カラリパヤットゥとモヒニアッタム30分

その他、ヨガや瞑想のセッション、カラリパヤットゥのトレーニングなども行っています。ミュージアムではカラリの武具などの展示も楽しめます。

③コーチン文化センター

Cochin Cultural Centre

18:00~19:00 カタカリショー

ケララを始め各地で開催されるイベントで、伝統舞踊のパフォーマンスを行ったり、伝統舞踊の踊り手を育てている教育機関でもあります。

カタカリ公演は、一年を通じて毎日行われています。摩訶不思議な世界にどっぷりつかってみてください。